ミッツケールちゃんの「みつける よのなか」blog

世の中のいろんなことを考察して深めたいミッツケールちゃんのブログ。本やテレビ、ニュースについて、あちこち寄り道しつつ綴ります。

考察★サイエンスZERO「インフラの危機を救う新技術」

 発展を終えて豊かになった現代社会。足元を支えるインフラがそろって悲鳴を上げているなんて考えたことなかったです。手が届かない老朽化した錆を判別して除去してくれる魔法のようなレーザーのお話、Eテレで見たので、内容と感想・考察を書いてみます。

4/15(日)23:30~24:00 Eテレ

見えないところで多くの科学技術に支えられている私たちの生活。
最先端で何が起きているのか、私たちがどんな世界にいるのか、真の姿に迫る番組です。
科学界にムーブメントを起こしそうな現場に潜入する「カガクの”カ”」も始まりました。


目次

レーザー×インフラ補修

 私たちの日常を足元で支える、道路や橋などのインフラ。 高度成長期やバブル期に作られて老朽化が進んだ今、徐々に問題が生じてきています。
 そんな古いインフラ設備をこれからも安全に使っていけるよう補修は大切。 補修といえば、作業員や職人が手作業で地道に行うというイメージですが、今、これまでの常識では考えられない新しい補修の技術が注目されています。

 そんな救世主が、レーザーです。
 橋げたなどの基盤に使われている金属に生じる、錆(さび)。高エネルギーかつ対象によって挙動が異なるレーザーの性質を利用して簡単に落とせるようになってきた、というのが今回のテーマです。

触れず返らず、魔法のような新発想の補修工事

 この技術、新しい金属と錆びた金属、両者の光に対する性質の違いに目をつけて生まれました。 鉄などの金属は光を反射しやすい性質があります。これが、表面が錆びることで性質が変わり、光を吸収しやすくなるというのです。

これを踏まえ、エネルギーが強いレーザー光を当てることで、
 問題のない金属部分はそのままに、
 レーザーを吸収した錆だけが高温になり弾き飛ばされる
という仕組みの道具が開発されました。

 番組では、錆びて変色した金属で実演していました。複雑な形をした工具も、レーザーを当てるだけで見る見るうちに色が元に戻っていき、わずか数分で新品同様のピカピカに。見ていて気持ちのいい作業でした。

 今までこういった錆を除去するのに使われていたのは、大量の砂をぶつけることで錆を引きはがすサンドブラストという方法が一般的でした。ただ、錆は人1人がやっと入れるような狭い隙間部分にも生じるため、粉塵が舞う中での補修作業を余儀なくされ、現場の大きな負担に。
 レーザーは放出しても、砂ぼこりが舞わないばかりか、反動で強い力が跳ね返ってくるということもなく、作業者の力が弱くても扱いが簡単。実際に現場で導入が始まっているそうです。

錆びていく日本のインフラ

 現在、橋の老朽化は、全国あちこちで大きな問題になっているそうです。 高度成長期に大量に建設された橋。同時期にできただけに、約50年が経った今、続々と錆びが深刻化しています。なんと、現在、橋は全国で約70万もあるそう。全てを点検し補修することは並大抵のことではありません。
 さらに、日本は島国なので海からの潮風による塩害が、錆の進行に拍車をかけています。

 そんな中、開発されたレーザーによる補修技術はまさに救世主。現場が狭くて近寄れずよく見えなかったり手が届かなかったりして、橋全体を立て直さなければいけないような状況に、大きなニーズが考えられます。

来たる、インフラ界”団塊の世代”に

 ある程度、国としての発展を終えて一息ついた我が国ならではの緊急事態ですね。橋だけでなく、上下水道など一時期に急速に普及したものもそろそろ危ないころだとのこと。インフラ界の団塊の世代といった感じでしょうか。

 実は、ミッツ・ケールちゃんの実家でもつい先日、漏水事件が起きたところで他人事じゃありません。夜中に床下のパイプから見る見るうちに水があふれてきて、一晩のうちにフローリングが駄目になってしまいました・・。
 駆けつけてくれた職人さんによると、上水道は圧力が日常的にかかるだけに劣化は避けられず、まとめて建設されたマンションで不具合がこれからますます増えるだろうということでした。我が家は比較的築浅な方(といっても築20年ほど)で、新しい形式の建築での上水道トラブルの”走り”だったようですが、古い形式の家では老朽が表面化するピークを迎えていて職人さんは毎日修理に駆けずり回っているそうです。

 建築物は、内部構造が普段見えない部分だけに素人がケアするのは困難だし、作って終わりでなくその後のフォローもセットに計画する必要があります。が、新しいものがどんどん生まれ、消費もスピードアップした時代、できてしまえばそれで終わりで管理は疎かになりがち。
 インフラというものはそこに当たり前にある存在だけに、あるということすら忘れがちですが、欠損すれば人の命に関わる、まさに基盤を支える存在。なのに、外からは問題を発見しづらいときている。
 そういう意味でも、問題のある錆部分だけを選択的に落としてくれる性質のレーザー技術は、発展を終えたこの日本において今後ますます注目されるのではないでしょうか。

塗装会社発。バックグラウンドが違えば、課題の捉え方も変わる

 今回、ミッツ・ケールちゃんがおもしろいなと思ったのは、このレーザー補修技術が塗装会社発だということです。開発の背景には、錆=塗装の一種と捉える発想があったのではないかと推測します。普段は塗装が落ちないように励んでいる人たちが、逆にどうすれば落ちるのかを考える。金属のプロフェッショナルとは違った、課題へのアプローチだったのではないでしょうか。
 さらに、最先端のレーザーを研究する大学と、実用的な街の産業を担っている現場がタッグを組んだこと。SFを思わせる夢のような技術ながら、成し遂げたのは現実で地道に努力してきた人たち。三人寄れば文殊の知恵じゃないけど、いろんなバックグラウンドの人が協力し合うことの可能性を感じました。

 このことは終盤に紹介されていた開発者の思いにもつながるように思えます。
 現場作業員の高齢化を案じ、若い人にも敬遠されないよう「3K(きつい、汚い、危険)」のイメージを払拭したいという開発者。体への負担が少なく、見た目にもかっこいいSFのようなレーザー技術で、日本のインフラの分野を変えたいと。
 高齢化で技術の継承者がいなくなるという人数的な問題ももちろんですが、新しい発想を持つ世代が増えて多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まれば、
  ものを新しく作り出す高度成長期
    ⇒ここ50年の”発展後ひと休み期”
      ⇒既にあるものを補修・アレンジしてさらに発展する未来
このようにフェーズを移すことができ、現況の課題解決につながるのではないでしょうか。

 近頃では、スーツのようなデザインのおしゃれな作業服が作られているという話も聞きます。あわせて今回の開発者が目指す「工事の仕事が終わった後、そのままデート行けちゃう」ようなクリーンな仕事が実現すれば、現場作業職へのイメージが変わるのも夢ではなさそうですね。

余録・理解できなかったこと
  • レーザーって何者?なぜ大きなエネルギーが凝集しているのに作用反作用の法則が適用されないのか。物理学の問題を解くとき図に書き込むあの矢印・つまり力にあたらないのかな。F=maで、光の質量m=0ということかな。
  • 錆って酸化還元反応だからもともと金属の一部だと思うんだけど、錆を落としたら擦り減ってしまって強度が低下することにはならないのだろうか。
  • レーザーが細くて広い範囲に当てられないからといってプリズムで屈折させたら、拡散して面積当たりのエネルギーが減少しないのだろうか。そもそもレーザーって色が見える。ということは可視光みたいにいろんな波長が混ざっていないということ?それならプリズムを使う意義は?