ミッツケールちゃんの「みつける よのなか」blog

世の中のいろんなことを考察して深めたいミッツケールちゃんのブログ。本やテレビ、ニュースについて、あちこち寄り道しつつ綴ります。

考察★人類誕生#1「こうしてヒトが生まれた」NHKスペシャル

ある環境では少数派だったり不利に思えても、世が変わってしまえば役立つ能力になることがある。
人類の成り立ちは太古のことのようだけど、私たち現代人もその渓流の中にいるんですよね。 現代は成熟しきったように思えるけど、思わぬところで逆転が起きるかも。
EテレではなくNHK総合ですが興味深い特集をしていたので、内容と感想、考察を書きます。

4/8(日)21:00~21:49 NHK総合

人類が今の私たちの姿へと進化するまでにどんなドラマがあったのか。
最新の研究をもとにつくられたCG映像と共にひもとく全3回シリーズ。

NHKスペシャル 人類誕生 大逆転!  奇跡の人類史

NHKスペシャル 人類誕生 大逆転! 奇跡の人類史


目次

生き残ったサルと絶滅したサル

 人類の成り立ちと言えば、サルからヒトへだんだん変わっていく図をよく目にします。

 でも、実際はこんなにスムーズに左から右へまっすぐ進化してきたわけではなく、1つの種から色々な種類へ枝分かれして、同時期に複数の種類が競合していたらしい。その数なんとわかっているだけで20種類。 現代人であるホモ・サピエンスに到達するまでには、多くの生存競争が繰り広げられ、ほとんどの種類は絶滅してしまったということですね。

 どの種が生き残りどの種が廃れたのかを分けたのは、身体能力そのものの優劣というより、偶然起こった環境変化や他生物との関係性に適応したかどうかのようです。 なにしろ遠い昔のことなので不確かなことも多く、細かな事情は諸説あるようですが、番組で取り上げられた流れを前提に、人類について考えてみたいと思います。

二足歩行で実を集める

 サルとヒトの違いでまず思い浮かぶのが、前足後ろ足で四つん這いになるか、日本足で垂直に立つかですよね。
 初めて二足歩行したとみられるのは、約440万年前のラミダスという猿人。 身長120cmと小柄で頭は小さく、立つことに向いていそうなシルエットに見えます。骨盤はチンパンジーとは異なり、立ったときに上から重量がかかる内臓を支えられる横長の形状をしていて現代人に近いそう。

 この時代に限らず地球上の動物の大半が四足歩行。天敵の肉食獣から逃げるとき、四本足で駆ける方が絶対速いはず。
 不利だったはずの二足歩行ですが、この後の大規模な地殻変動による乾燥で木々がまばらになり、食料の果実が手に入りにくくなったときに有利に働きます。 両手がフリーだったことで、遠くからエサを抱えて運んでくることができたのです。

 このラミダス、足先はサルに近い物を掴める形をしていて、普段は木の上を歩いていたというから驚きです。足元の枝を掴むような感じで歩いていたんでしょうけど、効率が悪い気がします。
 平面に立つなら垂直方向に重力がかかるので、突端が接地面から離れていても安定しそうだけど、枝を足で掴むとなると、斜めに傾いたり、場合によっては逆さになったりしますよね。 体が揺れたときに、作用点が支点から離れていたら不安定なのでは。
 環境が変わらず森が豊かなままだったら、あっという間にいなくなっていたかもしれませんね。

一夫一妻の家族で協力

 厳しい環境下で生き残ったラミダスのもう一つの特徴として、特定のオスとメスがつがいになって協力しあって暮らしていたらしい。つまり一夫一妻制。 類人猿に比べて犬歯が大幅に小さく、武器として使っていなかったことから、メスをめぐって争うことがなかったと考えられるそう。

 オスが二足歩行で集めてきた食料を家族で分け合い、メスは子育て。 同種どうしで無駄に争わず子孫を残すことに専念しているのは、とても合理的ですね。それだけ環境に余裕がないことの現れのようにも思えます。
 食料を集めるために遠出しなければいけない状況が、逆に帰る場所を作ったのかも。分業しないと日々の生活だけで終わってしまって、子孫を残せなさそうですし。

 番組で出た、現代の一夫一妻の社会の中でなぜ不倫が起こるのかという突っ込みは、興味深いですね。
 より好条件なメスを求めてとっかえひっかえしている余裕なんてなかったのがラミダスだとすれば、相性が悪いつがいが再チャレンジしようとたくらめるぐらい社会として余裕が生まれたということでしょうか。
 物質的に豊かでなく生活が不安定な時代、合理性を突き詰めてきた先に現代はあります。そんな過程で満ちた閉塞感が、理性では解せない行動に現代人を走らせるのかも。

犠牲ありきの集団行動

 家族で暮らしたラミダスから時代は進んで約370万年前、さらに環境は悪化し、木々が消えた過酷な草原に生き残ったのは、アウストラロピテクス・アファレンシス。 サルのように物が掴める足を持ったラミダスと比べ、あまり器用には動かない現代人に近い足を持っていたそう。
 木々がなくなり、いよいよ地上中心の生活を余儀なくされたから私たちの足は平面に特化したのかもしれませんね。身長が120→150cmと伸びたのも、木の上でバランスを取らなくてよくなったからでしょうか。

 二足歩行なので足は遅く、武器になるようなキバも持たないまま、危険な草原で食料になる虫や草をなんとか探して生活。 トラなど猛獣の攻撃から身を守るために、10人以上の集団で行動したようです。
 数で対抗とはいえ、武器も持たない非力な個体がいくら集まっても、天敵に打ち勝てるような戦力には到底なりません。誰かが犠牲になっている間に他が逃げおおせるという感じ。

 1人1人が生存することに重きを置かず、集団全体として次につなげる超個体の戦略を彷彿とさせます。 隠れる場所も少なかったでしょうし、よくぞ持ちこたえたなぁ。

弱点を克服するための道具

 その後の約240万年前、人類は進化の分岐点を迎えます。華奢なホモ属と、頑丈なパラントロプス属、ライバルが共存したのです。 噛むための筋肉が優れたパラントロプス属は、現代人の3、4倍もの噛む力を持ち、乾燥した豆や草の根っこなど食料には比較的困らなかった。にも関わらず、生存競争を勝ち抜いたのはホモ属でした。

 ホモ属は、死肉をあさるハイエナを追い払って横取り。肉はほとんどついておらず、骨の中にある骨髄を食べるしかありませんでした。
でも、骨を割ろうとするうち、割れた石がナイフになることに気付いたという幸運が起こります。当時の骨には直線的な切り傷が残っており、鋭い石器を発明していたことがうかがえるそう。
 あごが弱いという身体能力の弱点を克服するために、道具が必要だったんですね。必要は発明の母ということわざがこんなに昔から当てはまっていたとは。

 生存競争に敗れた方のパラントロプス属は一見有利に思えるけれど、考えてみれば、ライバルのホモ属と比べて強いというだけですもんね。猛獣と比べても打ち勝てるほどの能力ではない。 中途半端な能力で隣の人に勝利しても、置かれた環境全体でアドバンテージにならないと生きる術には不十分だということでしょう。
 正統派において勝ち目がないのなら、オリジナルの別の道を探す。今の私たちにも通じる生きる知恵のように思えます。

いよいよホモ・サピエンス

 ヨーロッパに移動したネアンデルタール人、アフリカでは他のホモ属が生きる時代、遅れて現れたのが我々の先祖であるホモ・サピエンスです。

 約19万年前の氷期で大幅な気候変動で、アフリカの赤道付近にいたサピエンスを取り巻く環境は一気に草原から砂漠へ。絶滅の危機に見舞われた彼らは、食料を求めて大陸南端の洞窟奥深くに逃げ込みます。 寒い中暖かいはずの赤道付近を離れていったということですから、よほど食料が手に入らなかったのでしょうね。

 でもこの移動が幸いし、海辺の限られたエリアでのみ取れる貝類を口にすることができました。 森や草原で長らく生きてきた人類にとって未知の食べ物だったムール貝などを、食として取り入れることのできた好奇心の強いもののみが生き残り、その数は激減。 数少ない個体を起点に急激に増えたことが、現在地球上に70億人ものヒトがいるにも関わらず、遺伝子の違いが少ないという結果につながっているそうです。

 このボトルネック現象によって、見た目は違うようでも遺伝子は似通っているという現代になりました。
 生存競争に勝ち続け進化を遂げてきた人類は強くなったとも言えますが、多様性が失われたという点では、何か事が起きれば全滅する可能性を孕む危機的状態にも思えます。 これから大幅な環境変化が生じた際に人類は果たして生き延びることができるのでしょうか。第1集を見て、生き延びる上でのカギは、”食”を確保できるかどうかだと感じました。 第2、3集にさらなるヒントを期待したいと思います。

続き(第2集)はこちら↓ inusarukizi.hatenablog.com



---広告---