月が最も美しく見える時代に、人類は居合わせたのかもしれません。
あまりにも身近な月。科学的にも哲学的にもいろんな見方ができそうです。
天体としての月への理解が深まりました。内容(一部)と考えたことを記します。
5/16(水)22:00~22:45 Eテレ
日常で何気なく感じるフシギを「ヘウレーカ(わかった)!」と解き明かす
浮力について解き明かしたアルキメデスにちなんだ番組で、自然科学が中心
目次
どこまでもついてくるお月さま
月って私たちの生活圏から遠く離れたところにありながら、とても身近な存在ですよね。 古くから、月を見つめて物思いにふけったり、「月が綺麗ですね」と囁いてみたり。竹取物語をはじめ、時代を超えて様々な創作物にも登場してきました。
夜空を見上げれば月が見えて、どこに移動しても振り返れば変わらずそこにいる。子どものときに見た月が、大人になっても夜空で輝いている。 そんなよく見知った存在だから、見る人それぞれがそのときの心情を投影してしまうのではないかと思います。
変わらないようでいて、三日月や満月など日々変化があり、スーパームーンや皆既日食など時には違った表情も見せてくれる月。
普段なぜだか星、月、と区別することが多いけれど、当たり前ながら月も星のひとつ。今回は、そんな天体としての”月”に注目です。
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今の月に立ち会えたのは偶然か必然か
他の星と区別するのも当然。地球から観測する我々の目から見れば、月は他と比べてかなり大きく見えます。天体そのものとしてはどうでしょうか。
月は地球の周りを公転する衛星です。
太陽系の中では、単純なサイズこそ衛星の中で5番目ですが、主星との比率で考えると破格の大きさ。直径にして地球の4分の1ほどもあります。
地球10周分ほど離れた位置にあり、宇宙の中でみればかなりご近所さんという印象。
サイズ自体がそれなりに大きく、位置関係も比較的近いということから、月が人類にとって身近な存在であることも頷けます。
ところが、月は公転の勢い余って外側に軌道を膨らませていて、地球から毎年3cmずつ遠ざかっているらしい。
このまま離れていったら今ほど鮮明に大きく見えなくなって、月の特別感が失われる日が来るかもしれません。
まぁその時代には人類は滅亡しているでしょうけど。
逆に、太古の時代は今の15分の1ほどの近さにあったとのことで、世界一周するより月に行く方が近い!
それだけ近ければ月との間にかかる万有引力は格段に強大だったはず。潮の満ち引きなど地球全体の環境が今とは大幅に違っていたでしょうね。地球から見える月は今より200倍も大きかったとのことで、環境を大きく変動させてくる巨大な存在は畏怖の対象となりそうです。
まぁこの時代にも人類は存在していなかったでしょうけど。
現在は月がほどよく離れ、太陽と同じ距離に位置しているため、皆既日食を見ることができているという幸運にも私たちは巡り合っています。
人類が繁栄するこの時代に、安定にも神秘にもつながる絶妙な距離感をわきまえてくれたという偶然が、私たちを月に魅了させる理由なのかもしれませんね。
偶然ではなく必然だという気もしてきました。月がほどよい距離にある条件での地球環境だからこそ人類が繁栄したとすれば。私たちは月ありきの存在で、惹きつけられるのも当然、とは言い過ぎでしょうか。
いつどうやって生まれたか
数ある星の中でも身近な存在であり、もっとも研究が進められてきた月。しかし、その起源や可能性などまだまだ未知の部分は多くあります。
最大の謎と言われる月の起源については複数のシナリオがあるそうです。
・親子説:地球が速く自転する余り、一部がちぎれて月になった
・姉妹説:地球ができたとき、隣で同様に小さい岩石が集まって月になった
・他人説(捕獲説):別の場所でできた月がたまたま地球の近くを通りかかり、重力で捕まって定着した
月は、地球とは組成が大幅に異なり(大きさは近い割に軽い)、同じ太陽系の中でできたとは考えにくいらしいので、姉妹説や親子説は違うのかな。親子説なら地球の外側だけがちぎれたら組成違うのもありえるかな。
現時点で最有力なのは、
・巨大衝突説:完成間近の地球に別の星がぶつかり、破片が自分の万有引力でまとまって月になった
だそうですが、今後覆る可能性もあるようです。
月が地球化する日が来るかも
番組では、江戸時代から続く観測の拠点・国立天文台のほか、月の無人探査機を開発する民間企業も紹介していました。
月に氷のような状態で存在する水資源を宇宙の石油として燃料に使う計画や、人間が暮らす街の建設も目指しているそうです。
月を足がかりに、宇宙に経済を切り開くという壮大なプロジェクトが進んでいました。
月について知り比較することで、地球を理解するヒントにもなるとのこと。成長過程の子どもが、他者を意識しはじめることで自我に目覚めるというのに似ているように思います。
重力や気温を考えれば、月で普通に生活するというのはかなり難しいことでしょうが、いつか月生まれの子孫が出てくるかもしれませんね。
そんなことを考えていたら、星新一『地球から来た男』の、異星人(と思われる人たち)も自分たちが暮らす地のことを”地球”と表現しているという一節を思い出しました。
人類の拠点が月にまで広がったら、月も”地球の一種”といった感覚になるかもしれない。
考えるだけでややこしいけど、このややこしさを払拭するべく、”二つの地球”の違いの探求が加速して、結果的に地球というものへの理解が深まるかも。……ちょっと妄想が過ぎたかな。
科学的な天体に乗っかる”神秘の月”
月を目指す人たちの情熱は見上げたものでしたが、これは今に始まったものではないとも言えます。
400年ほど前に初めて望遠鏡で観測したガリレオ・ガリレイが、神秘的な天の世界と思われていた月が、地球と同じく山や谷のある大地であったことに驚いて以来、多くの人たちが月に探究心を捧げてきました。
そのもっと前をたどれば、天動説・地動説の生まれるより以前に書かれたはずの竹取物語で、かぐや姫は月の世界へと帰っていきます。 地球という概念もなかった時代なのに、空に現れる丸い物体に人が住むという予感があったのでしょうか。
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番組内で又吉さんが「どこにいても月が見えれば、地球規模での実家にいる感覚」だと表現していました。
科学技術が発達して宇宙という概念が広まり、高精度の観測ができるようになっても、生活に役立てるために行う天体研究というだけでは説明がつかない月への憧れは依然として根強いように思います。
人類が誕生するずっと前から空に浮かんでいた月。全貌を解き明かす日はくるのか。解き明かしたとしたら、月を神秘的に捉える人類の心情はどう変わるのか。 そんなことを考えながら、夜の窓辺で月に思いを馳せようと思います。
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