ミッツケールちゃんの「みつける よのなか」blog

世の中のいろんなことを考察して深めたいミッツケールちゃんのブログ。本やテレビ、ニュースについて、あちこち寄り道しつつ綴ります。

考察★人類誕生#2「最強ライバルとの出会い そして別れ」NHKスペシャル

生物としての弱さを補うために社会が作られ、文化や宗教が結びつきを維持した。 そうして、外の自然ではなく体の内から信仰が生まれ、自分たちを自然から切り離し特別視する「人間」となったのではないでしょうか。 人類誕生の第2集、視聴して考えたことを書きます。

5/13(日)21:00~21:49 NHK総合

人類が今の私たちの姿へと進化するまでにどんなドラマがあったのか。
最新の研究をもとにつくられたCG映像と共にひもとく全3回シリーズ。


目次

屈強かつ知的なネアンデルタール人

 前回に引き続き、人類進化の特集。 今回は、私たちホモ・サピエンスの最後のライバル・ネアンデルタール人との生存競争です。

 第1集で見たように、アフリカで誕生し、いろいろな種類に枝分かれしながら進化してきた人類。

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共通の祖先から進化したネアンデルタール人は、サピエンスより10万年早くアフリカを出てヨーロッパに移住し、進化を遂げた種類です。

 筋骨隆々で毛むくじゃらなネアンデルタール人は屈強なだけでなく、サピエンスよりも10%以上大きい頭蓋骨を持ち、言葉を操る能力や知性も高かったと分かってきました。 骨器で皮を加工して服にしたり、帆立貝のペンダントや鷲の爪のブレスレットなどの装飾品を身にまとったり。
 気温の低いヨーロッパで繁栄するため、手足など胴体から突出した部分が短い体型になることで環境適応。獲物に接近する武力行使の狩りをしていました。

 一方、サピエンスは、全身の骨が細く力弱かったため、ウサギなどの小型動物を地道に捕まえて命をつないでいたようです。

”巨人の肩の上に立つ”社会

 その後の大規模な気候変動ハインリッヒイベントによって訪れた食糧難を乗り越えたのは、体格の上で不利に思えるサピエンスでした。
 死と隣り合わせの肉弾戦を行っていたネアンデルタール人に対し、サピエンスは弱い力を補うために、遠くの獲物を狙う飛び道具を作り出し、石器を繊細に改良し鋭利なナイフを作り出したのです。

 さらに、血縁関係による家族を超え、数百人単位の集団社会を作って共同生活。協力し合って動物の群れを追いこんで笛で合図するなど、戦力の補填を試みました。
 集団が大きくなることで、道具の革新にも拍車がかかります。大人数で情報を共有することで、さらに優れた道具へと改良していきました。

 第1集にも出てきましたが、必要に迫られるということは、新しい知恵を生み出す上で重要な材料になるんですね。 現代でも「巨人の肩の上に立つ」という言葉があります。1人が一生のうちにやり遂げられることには限界がありますが、先人の功績をスタートにすることで、先人以上の地点に到達することができます。
 厳しい環境で生き抜く上で、弱いから力を合わせるという発想は必要不可欠といえます。数人の家族単位で暮らしていたというネアンデルタール人は1人1人の体が大きかったばかりに巨人の肩を探す必要性が感じられなかったのかもしれませんね。

本当の敵は見えないところに

 同じ祖先から生まれ、別の場所で進化した遠い親戚のようなサピエンスとネアンデルタール人
 互いに独立した環境で独自に進化していたというところから、ガラパゴス化という言葉が思い浮かびました。 気候や食料事情などが違う中で、それぞれの生活スタイルを確立させていったのでしょう。

 ただ、最近の研究でずっと離れていたわけではないことが分かってきました。 サピエンスがアフリカを出たことで、約5万5000年前、両者は中東で出会っていたと考えられるそうです。
 しかし、同じ時間、同じ場所で隣り合って生きてきたにも関わらず、生活スタイルが違ったために直接、攻撃し合うことはなかったのではないかということ。

 その体格の違いから、1対1で戦えばサピエンスはネアンデルタール人に負けていたはず。 直近の戦いを避けたおかげで、環境適応にパワーを十分に割くことができ、結果的に競合相手を制するになったんですね。
 意図的にライバルを蹴落とさなくても自分たちの強みで生き残る。現代の競争社会でも参考に出来そうな戦略に思えました。

社会に生まれた文化が、自我を自然から切り離した

 生き延びるためにできたサピエンスたちの”社会”。その副産物として生まれたのが文化です。

 装飾品を死者と共に埋葬したり、現実にはいない不思議な生き物を冠した儀式が行われたり、原始的な宗教が生まれたと考えられるのもこの頃。 死後の世界を想像し、思いを馳せるようになりました。
 宗教は共に生きる人々の間に強いを生み出し、巨大な社会を生み出す原動力となったといいます。 歌や踊り、洞窟の壁画、麻薬による幻覚など、同じ行動様式を介して連帯感が育まれていき、食糧難でも助け合って生き延びることができました。

 また、道具を使って狩りをすることでバラエティ豊かな食材が手に入り、食が多様化。ローズマリーなど香草で味付けするなど、生活の糧を超えた楽しみとしての食文化に発展したようです。 共感する同族どうしだったからこそ、集団どうしの戦争も起こったと考えられています。

 第1集を見て、進化のカギになるのは”食”だと感じました。それが、ここにきて生命をつなぐ”食”以外の価値観が生まれることになったということですね。
 同じ生活様式において、信じる信じないの差は大きいことでしょう。自分たちと同じ信仰を持たないと感じることが、同族間での差別意識を生み、自分とは違うものを排除することにつながったのではないでしょうか。

 自然の恵を受けてその日を生きるばかりの受動的だった人類が、外の見えない洞窟内にこもり主義主張を内から編み出して共有する能動的な存在になったということ。
 自然に合わせて生きるサルから、自然を自分たちの都合に合わせるヒトに変わったのがいつかと言えば、この時期なのではないかとミッツ・ケールちゃんは考えます。自然と同化した生物という枠を出て、自身を自然から切り離しどんな立ち位置にいるのかを理解し、人間としての自我が目覚めたと言えるのではないでしょうか。

留学した遺伝子

 最新のDNA解析により、ほぼ世界中の現代人に2%ほどネアンデルタール人のDNAが受け継がれていると分かってきたそうです。

 アフリカのサハラ砂漠より南の人たちにはこのDNAが見られないことから、アフリカから出たサピエンスがネアンデルタール人と出会って交配し、両方の遺伝子を持つヒトが世界中へ広がったと考えられます。ネアンデルタール人のDNAが混ざったことは、アフリカにはないウイルスに対する免疫遺伝子などが引き継がれることを意味し、現代人にとっては有益だとのこと。

 前回、サピエンスは一時激減したことから、ボトルネック現象により多様性が失われたのが現代人だと知りました。 でも、異なる種類であるネアンデルタール人のDNAもわずかながら受け継いでいたんですね。
 ネアンデルタール人も元をたどれば祖先はサピエンスと同じですが、サピエンス激減以前に枝分かれした存在です。ネアンデルタール人との交配は、現代人にとって多様性の復活につながったと言えるでしょう。
 ネアンデルタール人がサピエンスに先駆けてアフリカからヨーロッパに出て行ってから、両者が中東で再会し交配するまでおよそ30万年もの間、異なる環境で積んだ経験が、私たち現代人にも受け継がれているというのは驚くべきことですね。一度は分かれたネアンデルタール人取り込むことになるとは。人類全体で見れば、遺伝子の一部を留学させたとも言えるでしょうか。

 さて、次回は最終回。こうして受け継がれた遺伝子が日本ではどう生きているのか。7月の放送を楽しみに待ちたいと思います。

ネアンデルタール人は私たちと交配した

ネアンデルタール人は私たちと交配した



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