ミッツケールちゃんの「みつける よのなか」blog

世の中のいろんなことを考察して深めたいミッツケールちゃんのブログ。本やテレビ、ニュースについて、あちこち寄り道しつつ綴ります。

考察★サイエンスZERO「仮想通貨 コンピューターサイエンスの大発明」

 仮想通貨は一気に広まったけれど、投機で儲ける目的の人ばかりで「仮想通貨でジュースを買った」という声は聞きません。 利用者みんなで安全性を担保するブロックチェーンという仕組みも、安全に運用するにはそれなりの知識が必要みたい。
 物々交換⇒金(ゴールド)への引換券⇒国が価値を保証する日本銀行券⇒仮想通貨、という展開には当分なりそうにないですね。 仮想通貨の上辺ばかりが脚光を浴びているけれど、仕組みを支える技術を知ることも大事だと番組を見て思いました。内容と感想を書きます。

6/3(日)23:30~24:00 Eテレ

見えないところで多くの科学技術に支えられている私たちの生活。
最先端で何が起きているのか、私たちがどんな世界にいるのか、真の姿に迫る番組です。


目次

”デジタルなお金”を成り立たせる技術

 サイエンスを扱う番組なのに、テーマが仮想通貨と聞いて、これは科学なのか?と一瞬思いましたが、仮想通貨という新しい経済概念を支える技術に着目した話でした。

 お金というとあまりにも身近ですが、ものやサービスを売り買いするための媒体のこと。 人間が他人と関わり合う社会を形成するようになって物々交換が始まり、みんなが価値を認める金(ゴールド)に裏付けられた兌換紙幣になり、国が価値を保証する不換紙幣に。 時代ごとに姿を変えてきたお金が、目に見える形を消したとも思わせる仮想通貨。 その存在を可能にしたコンピューターサイエンスの技術ブロックチェーンとは。

いまさら聞けない ビットコインとブロックチェーン

いまさら聞けない ビットコインとブロックチェーン

みんなから記録が見えるセキュリティ

 手元に千円札があれば、燃えてしまったり盗まれたりしない限り、いつでも1000円のお買い物をすることができますよね。 でも、仮想通貨の場合、1000円という画面表示以外は何も形に見えません。 この1000円というデータがいつでも失われずにそこにあるために、安全性を担保する技術ブロックチェーンです。

 お金のやりとりがある一定量たまったらブロックごとにかたまりにして、チェーンで結びつけていくデータ。言ってみれば、預金通帳のようなものでしょうか。 現金の場合は銀行に預けたとしても預け主銀行しか記録を見ることができませんが、仮想通貨のブロックチェーンは広く公開されていて誰にでも見ることができます。
 一見、閉じられている現金の預金の方が安全に思えますが、銀行のシステムが破綻したら終わり。一か所に情報の根幹が集まっていることはリスクでもありました。 仮想通貨の場合は、取引を行うそれぞれのコンピューターがデータを記録しており、1つが駄目になったとしても大丈夫。

 でも、全てのコンピューターが一斉にウイルスに感染してデータが改ざんされたらどうなるのか。ネットワークでつながっている故のリスクですよね。
ここに、他人がデータを改ざん盗難を防ぐための、セキュリティ技術が必要となります。

 仮想通貨市場の急拡大と共に、ブロックチェーンという言葉はよく耳にするようになりました。最近は仕組みはなんとなく知っている人も多いのではないでしょうか。 でも、そのブロックチェーンを支える技術ってどんなものなのか。ここで、サイエンス的な話になっていくんですね。

複数の情報×偶然できた暗号=安全

 この技術の要は、ハッシュ値ナンスというものです。

 まず、ブロックごとに取引情報を64桁の文字列ハッシュ値」に暗号化ハッシュ値は意味の分からない文字列であり、どんなルールで暗号化したものかも分からず、ハッシュ値を解読して元のデータに戻すのはほぼ不可能です。 データが1か所変わっただけで暗号全体が全く違う値になるため、少しでも改ざんするとすぐに分かります。

 データがたまっていくとそれまでのブロックは閉じられて、次の新しいブロックへの書き込みが始まります。 新しいブロックでも取引情報がハッシュ値に変換されるのですが、このとき、前のブロックの情報も組み込まれます。
 さらに、チェーンをつないで連結するためには、ハッシュ値の冒頭に0が15個連続しなくてはいけないという縛りがあります。 0を15個入力するだけじゃんと思うなかれ。どんなルールかも分からない変換の結果が15桁の0にならなくてはいけないのです。 上述の通り1か所でも違えば、惜しいどころか全体やり直し。手当たり次第に膨大な計算を重ねて条件に合う値がナンスというものです。

 つまり、1つのブロックを改ざんしようとハッシュ値をあばくためには、新しい取引情報前ブロックの情報15桁の0という結果になるナンス、という複雑な要素を全て解読しなければいけないことになります。 計算でナンスを探す作業=マイニングだけでも、高性能な機器で多くの時間を要するというのに、現実的ではありませんね。

 さらに、ブロックごとにチェーンでつながっているので、1ブロックを改ざんするとそれ以降のブロック全てががらっと総とっかえされて、つじつまが合わなくなってしまうという事態になります。
 生データ偶然が絡み合って暗号化することで、安全性が担保されているんですね。

多くの人の手に渡る”お金”なのに簡単に使えないなら普及は難しそう

 ただ、仮想通貨が出回るとともに起きている巨額流出事件。この原因も、暗号化の複雑さにあるようです。
 本来は個人が直接ブロックチェーンに計算をして書き込むべきものが、効率性を考えていったん取引所がデータを担っているのです。 取引所はある程度記録がたまってからブロックチェーンにまとめて書き込むのですが、その前に改ざんを狙う第三者がもぐりこんで不正送金してしまうという事態が起きています。 これが最近問題になっている巨額の仮想通貨流出事件の図式です。

 現金の場合はお金が集まる銀行のシステムが破綻するというリスクがある一方、仮想通貨は分散している分安全であると上で述べました。 でも、仮想通貨というものにみんなが安易に飛びつくことで、専門の取引所にデータが集まるのであれば、仮想通貨の本来のメリットが失われている状態とも言えますね。 一番脆いところを突かれないために分散したはずなのに、結局集まってきているなら意味がありません。

 でも、マイニングを行うには、高性能な機器知識が必要です。 番組では実際に計算を行うグラフィックボードが映っていましたが、設置する時点でかなりの場所を占めるし、長時間にわたって高度な計算作業をさせるので電気代もかかります。

 複雑にして安全にしたはずのブロックチェーンを、安全便利に使うには複雑さがあだとなるという皮肉な結果。 貨幣という性質上、多くの人の手に渡ることは避けられないし、それが貨幣であるゆえんとも言えます。
 仮想通貨は形がないだけに、違法な取引に使われやすいという問題もあります。このあたりの弱点をどう克服していくのか。

 現状、仮想通貨を日々の生活のお買い物に使っているという話は聞かず、投機目的の人ばかりですよね。 人類が形を変えながらも使いこなしてきたお金というもの。仮想通貨がその進化形となる日はくるのでしょうか。
 儲ける手段にしかならないのなら、通貨と名のつくものの、株券の域を出ないような気がします。



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