ミッツケールちゃんの「みつける よのなか」blog

世の中のいろんなことを考察して深めたいミッツケールちゃんのブログ。本やテレビ、ニュースについて、あちこち寄り道しつつ綴ります。

米朝首脳会談の日に。郵便受けに届いた人間味

 北朝鮮から絵はがきが届いた。送り主は、知り合いの旅人。 奇しくも、史上初の米朝首脳会談に世間が沸いた日、我が家の郵便受けに入っていた。

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時差と国境を越えて

 既に帰国した報告をメールで受けていた。 国際郵便というものは到着に時間を要するもので、大幅な時差を経て届いた1枚のはがき。 朝鮮半島随一の景勝地である金剛山が印刷されたはがきの裏に、「山歩きの景色が素晴らしかった」との旨がしたためられている。検閲を考慮してか、その内容は当たり障りのないものだ。

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 それでも、人の手を介して彼の地からはるばるこの古い民家に届いたことに少しの興奮を覚えた。 私たちが日ごろ慣れ親しんでいる郵便というコミュニケーションツールが、ほぼ断絶されている国交を越え、手元に収まったのだ。

 メールで聞いたところによると、金剛山大自然だけでなく平壌の街までもが、日本のテレビなどの特集で受けるイメージとはおよそ合わない、まぁのんびりしたものだったらしい。 中国の目覚ましい経済成長を横目に、時が止まっていると聞いた。一列に並んで畑を耕しているという。
 はがきの送り主は15年ほど前にも平壌に渡っているのだが、当時と比べても目に見える形ではさほど変化は見られなかったようだ。同行ガイドから聞いた話は、昨今の米朝関係をなかなかに踏まえたものであったそうだが。

近くて遠い

 私自身はこうして聞きかじりの土産話が精々なところで、普段はテレビ越しに見るばかり。北朝鮮という地に足を踏み入れたことはなく、ほぼ何も知らないに等しい。
 今の日本では同じような人が多いだろう。地球上の過密なエリアを外してぽつんと佇む島国としては、奇跡的な物理的距離の近さ。それに反し、精神的距離は言うまでもなく遠い。

 情報として入ってくるのは、政治的側面をクローズアップした報道で済めばましな方で、真偽の定かでない噂話まで、まことしやかにささやかれる。 もはやフィクション化しているようにさえ感じられる。自分たちの住む地とは異次元であり、まるで魔法が世の理である非現実的な世界だ。

 しかし実際は、内容には気を遣うもののはがきは日本の一般家庭に届くし、終始ガイド付きのツアーとはいえ渡航して観光もできる。
 さらに、ごく当たり前なことだが、そこで生活を送る人たちがいて、日常の時間が流れている。政権上層部の強烈さ、強硬さばかりが目立っているが、中で暮らす人たちも、1人1人違う人間だ。
 国がよそからどんな色に見えようと、それは、要素を包括した表面上の目立つ部分、すなわち代表的な色でしかない。 「日本に忍者がうろうろしている」レベルの捉え違いと言って差し支えないのではないだろうか。

 よその家のことに口を挟むべきでないとは言うものの、虐待されている子どもは社会が救い出さねばならない。 社会から締め出され自暴自棄になった人は自業自得なのか。いや、その人も含めてうまくやっていける世の中を作っていく必要がある。
 ようやくそんな世の中になってきた。これが、家だけでなく、国のレベルまでも拡張される日が待たれる。

会って話したという成果

 今回の共同声明をゴールから見れば、具体案やコストの話など、まだまだ詰めなければいけない要素はたくさんある。 それだけに「会っただけで終わってしまった」との声も上がっているが、その実、トップ同士が直接会って話す場をもったことは、非常に大きな一歩だと思う。

 国レベルの大きなスケールになっても、結局、中身は人だ。 人民も人間ならば、トップも人間である。やはり直接顔と顔をあわせることは人間関係の基本なのではないか。 文面では誤解を生みやすい。気心の知れていない相手ほど、メールより電話、電話より直接アポを取って会うべきだと、オフィスで痛感している。

 ましてや北朝鮮のメディアが報じるニュース番組を拾って推し量るのには限界がある。ツイッターでいうエアリプのような手応えの無さ。 不確かな噂話ばかりが明瞭に聞こえてきて、距離は遠のき、フィクション性は増していく。

 とはいえ、隣国と言えども現地に渡ることはそう気軽なことでないのも事実。 トップが国際社会の人前に姿を現し話し合いに応じた日、漠然とでも相手方に人間味を感じ取る人が増えたなら、確実に精神的距離を縮める一歩となりえるはずだ。 そして、それは向こうも同様であると思いたい。 気を揉みながら、次の一手をテレビ越しに見守っている。

隣人、それから。: 38度線の北

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