ミッツケールちゃんの「みつける よのなか」blog

世の中のいろんなことを考察して深めたいミッツケールちゃんのブログ。本やテレビ、ニュースについて、あちこち寄り道しつつ綴ります。

考察★又吉直樹のヘウレーカ!#8「なぜアリは行列するのか」

「ここには巣を作らないで」「いいよー」なんてアリと会話できる日がいつかくる?
言葉を使うヒトと、フェロモンを使うアリ。全然違う生き物のようで、いい情報が社会を動かすという点は似ているようです。 将来、アリ語の辞書ができて異文化コミュニケーションができたら、ヒトの合理的なようで合理的でない社会をアリはどう思うのだろう。
前回に引き続き、番組の内容と考えたことを書きます。

6/6(水)22:00~22:45 Eテレ

日常で何気なく感じるフシギを「ヘウレーカ(わかった)!」と解き明かす
浮力について解き明かしたアルキメデスにちなんだ番組で、自然科学が中心


目次

アリも並ぶよどこまでも

 アリの社会に迫る第二弾。 この前の放送では、アリの世界が超合理的な分業システムで成り立っているということを知り、驚きと共に人間社会に重ね合わせてしまいました。
inusarukizi.hatenablog.com

 1匹1匹には感情や意志がない超個体や、メス中心の日々の暮らしなど、ヒト以上に合理的な社会を突き進められる秘訣も垣間見えた、アリ社会。
 今回は、道端でよく見かける「アリの行列」に注目し、彼らの世界の仕組みをさらに深掘りします。

道しるべフェロモンをたどって行列に

 アリと一口に言っても、その社会はいろいろ。全てのアリが行列を作るわけではなく、「行列を作るアリと言えば種類が限られてくる」とアリ博士。 一行は、都内の公園でモリシタケアリの行列を発見しました。茂みの中から行列が出てきて、列をなしたまま木の幹へ登っていきます。
 目指す先は、木の上にいるアブラムシ。これらが分泌する液体「甘露」を収穫するため、モリシタケアリたちは巣と木の上との間に行列を作るのだそう。 無事、甘露にありつき降りてきたアリのお腹は透明に膨らんでいて、確かに蜜で満たされているようです。巣へ戻って女王アリや幼虫に分けるのでしょう。

 目的はあっさりわかりましたが、気になるのはその仕組み。 こぞって木の上を目指しているところを見ると、エサがあるという情報が伝わっているようです。その鍵となるのが、道しるべフェロモンと呼ばれる匂いを発する化学物質
 アリは巣を出ると、地面にフェロモンを残しながらエサを探し、運よくエサを見つけたアリは地面のフェロモンを頼りに巣へとエサを持ち帰ります。 このとき、エサを見つけたアリは通常より濃いフェロモンを分泌することで道しるべを残します。 それに気づいた近くのアリがフェロモンを頼りにエサへと向かい、帰り道にまた濃いフェロモンを残すので、どんどん濃度は上がっていき、付近のアリが集まって行列になるのです。

アリの社会: 小さな虫の大きな知恵

アリの社会: 小さな虫の大きな知恵

ネット上のバズのごとき情報拡散

 仲間にメッセージをしっかり伝えるフェロモンですが、揮発性があり、一定時間経つと消えてなくなるという性質を持っています。 いつまでも残っていると、あたり一面フェロモンだらけになってしまいどれが正解かわからなくなるので、消えてなくなるというのは地味だけど重要な性質ですね。

 さらに驚くのは、複数のアリが違ったルートで同じエサを見つけた場合。 それぞれが帰り道にフェロモンを残しますが、短いルートの方が、後に続いたアリが帰ってくるまでの時間も早いので、そのルートを通るアリの数が多くなり、遠いルートよりも徐々に濃くなっていきます。遠いルートは逆に、フェロモンが揮発してあまり上書きされずどんどん薄くなります。
 こうして、時間経過と共に最短距離があぶりだされていくという合理的な行列メカニズムが実現しました。なんと洗練された仕組みなのでしょうか。

 なんだか人間世界の流行に似たものを感じます。 あるツイートが1人、2人とリツイートされていくうちに、いつしかばーっと拡散して、みんながその話題に食いつき、しばらく経ったら跡形もなくなるという。
 1人1人が言葉で共有を図ることで、広まっていく人間界の流行。似たような仕組みが言葉をもたない昆虫の世界にもあったとは。

聴覚でも視覚でもなく、嗅覚でとるコミュニケーション

 アリがフェロモン介してツイッターしているなんて話になるとかなりファンタジー。 でも、私たちが言語で行っている情報共有が、フェロモンという化学物質に変わっただけと考えれば、シンプルにアリヒトは近い存在なのではないかと思えてきました。

 「こっちにエサがあるよ」と言葉を発せないなら、行列を見てついていけばいいのではと思ったけど、アリは生活のほとんどを地中で過ごすために視覚が発達していないのだとか。 聴覚視覚も駄目ならば、嗅覚がある。というわけで、フェロモンなど化学物質を体外に分泌することで仲間の行動を誘発し、コミュニケーションをとる形に発達したんですね。

 道しるべフェロモン以外にも様々な種類があり、分かっているだけで70種類以上のフェロモンを用途に応じて使い分けているのだそう。 体の表面には家族の臭いがついていて、敵味方を識別することもできるらしい。
 そういえば、小鹿に人間がうっかり触ると、人間の匂いがついてしまって親鹿が我が子を判別できなくなり、育児放棄するという話を聞いたことがあります。 こう考えると、ヒトが特殊なのであって、嗅覚コミュニケーションが地球規模ではスタンダードという気がしてきました。

みんな同じ行動でいいのか

 道しるべフェロモンに従って、どのアリも行列に加わっていく……と見せかけて、行列からはずれて我が道を行くアリもいるらしい。 一見、集団のためにならない駄目なアリに見えますが、この、行列に並ばないアリは、集団のために大切な役割を持っているそうです。
 エサが目の前にあるときは忘れがちな事実として、エサ源が見つかってもいつか必ず枯渇するということ、があります。 見つかったエサ源に全員で群がるのではなく、あとあとのことを考えて、一部のアリは常に新しいエサを探し続ける必要があるのです。

 第一弾で見た、いざというときのために一部のアリはサボって労働力を温存しておく戦略に通ずるものを感じます。 集団全体の生存のために、働きアリの中でも役割分担を徹底することで、リスクを分散させておくということですね。

 正解が分かっているのに、あえて道を踏み外していく個体は、長い目で見れば役立つかもしれない。 人間社会に置き換えれば、イノベーションを生み出すコツなのではないかと、アリ博士も指摘していました。
 ただ、すぐには役立たないように見えることに取り組んでいる人って、世間一般からは冷たいまなざしを向けられがちですよね……。 特に最近は、技術の進歩情報網の発達で社会全体のスピードが上がって何もかもが効率重視の風潮となっています。 目先の課題を解決できるかどうかという基準できっぱりジャッジされてしまい、無駄を排除しようという向きにこぞって進んでいるように思えます。
 便利になるのは有り難いことだけれど、余白が極端に取り除かれていくことで、寛容さが失われていきつつある世の中。 長期的な豊かさへの芽を摘んでいるんじゃないかと一抹の不安を覚えます。
 アリに限らず生物学の常識として、多様性は強みと言えます。 全員が同じ方向を目指し、1つの基準にあわないものを排除する社会って、整っているように見えて、いびつな気がしてなりません。

会話しながら農業するアリ

 ここまでフェロモンを使ってコミュニケーションするアリを見てきました。 アリは言葉を発さないということを前提にしてきましたが、実はいるらしいのです、言葉を発して情報交換しているアリが。

 その名も、中南米ハキリアリ。名前の通り、葉っぱを口先で切り取って巣に運び、発酵させることでキノコを育てて食糧にしているのだそう。 農業という高度な営みを生業としているだけあって、他のアリ以上に役割分担が細分化した複雑な社会を形成しています。
 葉っぱを切る係、運ぶ係、葉っぱを小さく刻む係、さらには、運んでいる最中の仲間を寄生バエから守る係まで。 巣の中でも、産卵担当の女王アリを筆頭に、さなぎを守る係、キノコ管理係、ゴミ捨て係。30種類以上の役割があり、巣全体の生存率を上げています。

 その社会の複雑さからか、彼らはフェロモンよりも効率のいいコミュニケーション手段を編み出しました。腹部を意図的にこすり合わせて会話をしているのです。 実際に集音装置で録音した音を聴いてみると、葉っぱの良し悪しを伝えたり、緊急事態を知らせたり、内容によって音の高さや種類を明らかに使い分けています。
 セミスズムシなども音を発するものの、その内容は求愛行動縄張りの主張など、自分の存在を知らせる程度のもの。それよりもはるかに複雑で、まさに「会話」と呼ぶべきものと言えます。

手紙から携帯電話へ

 現在、少なくとも15パターン判別されている”アリ語”。今後さらに録音の解析を行い、アリ語の辞書を作ることを目標に研究が進められています。
 ブラジルなどで甚大な農業被害を出している害虫でもあるハキリアリ。アリを薬剤で駆除するのでなく、会話によって平和に解決するのが夢なのだとか。

 他のアリが情報交換の手段としているフェロモンは、分泌してから仲間に伝わるまで時間差があり、いわば”手紙”のようなもの。 対して、言葉を発したその瞬間にリアルタイムでやりとりができるようになったことは、それぞれが”携帯電話”を持った状態と言えるでしょうか。
 この連絡手段の進歩は、個体どうしの距離をぐっと縮めたに違いありません。共同で複雑なことを成し遂げようと試行錯誤した結果ですね。

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