ミッツケールちゃんの「みつける よのなか」blog

世の中のいろんなことを考察して深めたいミッツケールちゃんのブログ。本やテレビ、ニュースについて、あちこち寄り道しつつ綴ります。

考察★デザイントークス+「モビリティ」

どこのメーカーの車も似たような方向へと進化してきたのは、公道に合わせて統一されてきたから。
便利だけど人の命に関わりかねない自動車を、斬新なデザインへと変えていくのは、他のデザインよりも圧倒的に難しそう。
これから乗り物はどう変わっていくか。番組で紹介されたモビリティについて考えたことを書きます。

5/29(火)23:00~23:30 Eテレ

身の回りの至るところにデザインは隠れている。
デザインに宿る精神や哲学をひも解きながら日本のデザインの世界を探求します。


目次

先進的な乗り物デザイン

 技術の進歩で、斬新なデザインの乗り物が登場しています。 単なる交通手段という枠を超えて、社会を変えていく移動の概念とは。

足るを知る車

 ゲストは、パーソナルモビリティを手掛けるカーデザイナー。 現代の、強さや速さが求められる多くの自動車とは逆行した、小さな自動車「rimOnO」のプロトタイプを開発しました。
(↓ 小さいけれど、この絵がrimOnO ↓)

カーデザインは未来を描く

カーデザインは未来を描く

 最高時速45kmで、近距離を移動するのに特化した作り。 外装にはクッション性のある低反発ウレタンと防水性を備えた布地を使っていて、万が一のときの衝撃が少なくなるよう設計されています。

 テーマパークや企業の敷地内での利用かと思いきや、公道走行を目指しているとのこと。 運転に不安を抱える高齢者を中心ターゲットに、ちょっとそこまで安全に運転できるというコンセプトらしく、アクセルブレーキの踏み間違いを防ぐため、ハンドルではなくバイクのような持ち手で運転します。

 この車が受け入れられるかどうかのポイントは、まず「事故でぶつかられたら危険だから軽自動車はやめた方がいい」という世の常識を黙らせられるかでしょうか。
 クッション性のある外装が搭乗者にどれだけ効果を発揮するかはわかりませんが、少なくとも軽いということは、大型車両が勢いよく衝突したらふっとんでしまいそう。 購入する高齢者の家族からの反対は手ごわそうです。

公道での住み分け

 公道へ出るには、他の車との住み分けが課題になりそうですね。

 時速30kmの原付が、併走する自動車の流れに乗れずかえって危ないという声はよく聞かれます。 追い抜く車のドライバーの力量次第のようなところがありますし、車側からしても速度の遅い原付は要注意な存在。
 最近は自転車が車道を走るようになり、こちらも事故が多発しています。
 幅が小さい原付や自転車でも物議を醸す公道に、遅くて小さな車が出ようとするなら、ドライバーへの周知道路環境の整備など、一筋縄ではいかない課題も多くありそうです。

 自動車がどこのメーカーのものも、似たような大きさ形で進化してきたのは、公道を走るものという前提で規格化されてきたからだと思います。
 言わずもがな、車は便利ですが一歩間違えば人の命が奪われます。それだけあって、他の車両との関係性をドライバー1人1人が重視する一種独特な車社会が形成されてきたとも言えます。
 そこに、斬新なコンセプトとデザインの小さな車が受け入れられる日は、果たして近いのでしょうか。

免許返納したくてもできない生活難民の救いとなるか

 さらに、気になるのは、山間部など限界集落買い物難民が多く発生する地方の、劣悪な道路状況勾配の中でもスムーズに運転できるパワーがあるのかということ。
 運転に不安を抱える人が、都市部に住んでいるなら免許返納しても公共交通網が発達しています。本当に問題なのはそうではない地方でしょう。

 免許返納したいという気持ちがあっても、車がなければ足がなくなってしまい、生きていくことができなくなる。離れて住む家族も反対しようにも反対できない。良くないとわかっていながら毎日の生活が迫る前ではどうしようもなく、リスクが大きいまま運転を選択してしまっている。
 高齢者の交通事故がにわかに注目を集め、事情を知らない世間からは「免許返納しろ」という声は高くなる一方。 でも、車がなければ本当に生きていけないという根本的な部分を直視しなければ、この問題は解決しないと思います。

高齢ドライバー (文春新書)

高齢ドライバー (文春新書)

 時速45kmといわずもっと落として、その代わり、走ることのできる道路の条件を広げることができたなら、今の社会では需要が生まれるのではないでしょうか。

借景

 番組の後半では、移動する建築も紹介されていました。 家ごと動き、風景の美しい場所で窓を開ければ、毎日違う絵画を飾っているような感覚になります。いわゆる借景というものですね。

 いいなあと直感的に惹かれる一方で、小説「キノの旅」のうちの1話「迷惑な国」を思い出しました。

国そのものにキャタピラがついていて世界各地を移動でき、進行方向に草木や他の国があってもなぎ倒していくという破天荒な国の話。 自分たちの生き方を貫きつつも周囲に大変な迷惑をかけているという迷惑な国が、何を象徴するのか、今でも時々考えます。

 借景も、移動する側は楽しくていいんだけど、そこにもともと住んでいる人からすれば、家の前に突如巨大な木の箱が出現して人が出てきたら驚くし、景観保護とかで迷惑だという声が出そう。

車という概念のパラダイムシフト

 街づくりやインフラにまで影響しつつあるモビリティ開発。 公道デビューしかり、移動先での借景しかり、既にある世界との折り合いに悩みつつも、社会の課題解決につながるようなデザインが続々と出てきているようです。

 今回のゲストは、トヨタのカーデザイナーをしていた経歴の持ち主でした。 車に”乗る”のではなく”着る”という観点からデザインを行い、今ある車を縮小していくのではなく人間を拡張するという発想でパーソナルモビリティを手がけてきたそうです。

 自動車というのは前述した通り、どうしてもその安全性の担保から、公道にフィットさせなければいけないという制限がかかってきました。 それが新たな局面へと進歩していっているということは、今までに見たこともない形の乗り物が誕生するということですよね。

 今回見た中で最も期待するのが、AIが運転手と会話したり表情を観察したりして状態を把握し、ストレス不安を感じたら自動運転に切り替えるというアイデアです。
体調によって判断力が欠如したり、時には意識がなくなったり、というのは何も高齢者に限らず、全年齢に共通する人間の弱点。 自動運転自体がまだまだ課題は尽きないものの、人間の起こす失敗をカバーできるようなモビリティが、街中の移動手段のスタンダードになる日がきてほしいと願います。

トコトンやさしい自動運転の本 (今日からモノ知りシリーズ)

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