4/9(月) 22:00~22:25 Eテレ
“大人になったグレーテルたちへ” スイーツに秘められた珠玉の物語
物語や伝統において重要な役割を持つスイーツ。
その秘密や背景、再現レシピに、15代目ヘンゼルと魔法のかまどが迫ります。
目次
今回のスイーツは、“不思議の国のアリス” のケーキ
ふしぎな夢を見させて♥ byグレ
深い穴に落ち、不思議な世界へ迷い込んだアリスが
“DRINK ME”と書かれた瓶の飲み物を飲んで小さくなったり、
“EAT ME”と書かれたケーキを食べて大きくなったり。
19世紀イギリスを反映した世界観
作者のルイス・キャロルがこの物語を作ったころは、世は産業革命を経て急速に豊かになった時代。
世界初の地下鉄が誕生したことに着想を得て、
穴に落ちて地下世界に入っていくストーリーが出来上がったとのこと。
人間が地下空間を移動するなんて考えられない時代だったからこそ生まれた、奇想天外な世界だったんですね。
「地底旅行(センター・オブ・ジ・アース)」にも通ずる?インフラ大革命
ここでミッツ・ケールちゃんの脳裏に浮かんだのは、ヴェルヌの「地底旅行(センター・オブ・ジ・アース)」。鉱物や火山、考古学などで巧妙に裏打ちされ、SF感が強い物語ですが、
未知の地下世界へ出かけ、帰還を目指すという意味では似ています。
イギリスとフランスで国は違うものの、調べてみれば、アリス1865年、地底旅行1864年と書かれた年も非常に近い。
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それまで見えず意識さえしなかった足元の土の下に、 人間が行き来できるレベルの、ましてや乗り物が通過できるレベルの空間ができるなんて、 既存の常識を塗り替えるとんでもない変化だったことでしょう。インフラの大革命が作家たちの想像力を刺激し、名作が生まれることになったのです。
現代に置き換えて考えれば、”通り抜けフープ” 実現化
テクノロジーの進歩である日突然、ドラえもんの通り抜けフープが完成して、
四次元空間を行き来できるようになった感覚でしょうか?
(ミッツ・ケールちゃんなら、何度もくぐり抜けて、ひとしきり未知の感覚で遊び倒すに違いない)
技術誕生⇒文化の起こり
それまで選択肢になかった技術が生まれ、作品が創作されるという流れは、 文化の起こりとして正統と言えるでしょう。 学問などハイカルチャーはもちろん、大衆文化、サブカルチャーなんかも、 その時代の目新しいテクノロジーが下地になっていることで、 同じ時代を生きる受け手に、不思議な力強さをもって迫るということはままあること。
ミッツ・ケールちゃんは、
「こんな発想があったか」と目から鱗ぼろぼろ落とされる創作物に出会うと、
こんなに心を打つ作品にもう出会えないんじゃないか、書きつくされちゃったんじゃないかと、
不安と感動が入り混じった奇妙な昂揚感に苛まれることがあります。
でも科学や技術が、文化の旗振り役と考えれば、
人類が進歩し続ける限り、新たなフィクションは生み出され続けるんでしょうね。安心しました
「不思議の国のアリス」は、ファンタジー色のSF
今回の「グレーテルのかまど」を見ていて、「不思議の国のアリス」は、ファンタジー色のSFと言ってもいいのではないかと思いました。
- 交通網発達でこれまでにない速さで遠くへ行けるようになった
⇒ 空間を飛び越えるように移動するワンダーランド - 高級品だったガラスが工業化で広く普及
⇒不思議な液体が入ったガラスのボトル - カメラが出回り始め、被写体が写真の枠に閉じ込められたように見えた
⇒部屋いっぱいに大きくなったアリス - 輸入されはじめた目新しい舶来品の果実カランツ
⇒不思議な出で立ちのケーキ - 品種改良で紅茶の価格が下がり、一般家庭に広く出回るように
⇒3月うさぎのお茶会の場面
ハチャメチャで理屈とは無縁のように思える ”不思議の国” が、実はサイエンスから着想を得ていたなんて思いもしませんでした。
数学者×エンターテイナーたる作者ルイス・キャロル
作者のルイス・キャロルはオックスフォード大学で教壇に立つ数学者。 新しいテクノロジーへのアンテナは鋭敏だったことでしょう。
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番組でも紹介されていましたが、
一緒に川遊びに出かけた知人の娘に即興で聞かせた話が基に「不思議の国のアリス」ができたというのは有名ですね。
もともと11人兄弟の長男で子ども好き。小さいころから物語作って弟たちに聞かせていたそうです。
自身が新鮮な驚きを覚えた新しい風を、年少者に語っていた姿が浮かびます。
急速な変化への戸惑い
一方、産業発達で忙しく働くようになり、社会全体がスピードアップした時代でもあったころ。
一息つくお茶の時間がますます求められるようになったことも指摘されていました。
最先端テクノロジーを象徴する地下空間をさまよい、未知の世界に翻弄されるアリスの前に突然、
お茶会の席が出現するのは、時代の変化を手放しで喜んでいいのか考えあぐねる意識の現れかも。
激動の時代の真っただ中、保守と革新、両方の実感が物語にも表れているのでしょう。
お茶会にほっとしながらも十分に楽しめないまま、次の展開に流されていくアリスの姿は、
時代は違えど、現代の私たちにも共通する普遍的な葛藤の姿なのかもしれませんね。
余談;魔法の力を借りたレシピ!?
再現レシピ・パウンドケーキ作りのパートにて。
ヘンゼルが、材料【卵、薄力粉、バター、グラニュー糖、牛乳】
を前にして、「この材料、不思議要素はないですね」なんて言っていたけれど、
ミッツ・ケールちゃんは目がハテナになりました。
<えっ、ベーキングパウダーは??何で膨らますの?不思議~!>
その後、普通にオーブンから膨らんだパウンドケーキが出てきて、魔法の力で膨らんだのかと(笑)
番組HPのレシピでは、何事もなくベーキングパウダー記載されていましたね。ただのミスでした。
物語が生まれた時代、オーブンが普及してきて、
パウンドケーキやスポンジケーキが巷で焼かれるようになった。
そんな背景から、パウンドケーキの再現レシピを紹介しているところは、
うまいこと番組の主軸につなげたなぁと感心しましたが。
揚げ足とってしまった……
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